「Taking Sides~それぞれの旋律~」 本多劇場

2019年5月25日(土) 

14時~  5400円 加藤健一事務所

脚本 ロナルド・ハーウッド
演出 鵜山仁

第二次世界大戦後のドイツで活躍する天才オーケストラ指揮者、
ヴィルヘルム・フルトヴェングラーは、
“ナチ協力者”の疑いをかけられ、連合軍取調官アーノルド少佐に厳しい
尋問を受ける。
アーノルドの部下・デイヴィッド中尉と秘書のエンミは反発を覚え、
フルトヴェングラーを擁護するのだが、ベルリン・フィル第二ヴァイオリン奏者
であるローデの証言により不利な状況に。。。。

 

10年以上前に一度だけ観たきりの加藤健一事務所をチョイス。
残席はわずかだったけれど、直前に席がとれて良かった。

前日に観た四季の「パリのアメリカ人」と同じ年代の話。
あちらは終戦後の復興で華やかになりつつあるパリの話しだったが、
近くのドイツではまだ戦争の余韻を引きずっていた。
パリアメのリズもユダヤ人ではあったのだけどね。

戦争を知らない世代ではあるものの、それがいかに愚かで誰も幸福にしないし、
或いは後生まで傷をひきずっていくものだということは、
いろんな読み物や映画、舞台、そして祖父母からの話しで少しは実感していた。

政治の思惑と絡まってこのようなことが実際にあったとは、
改めて戦争が何も生まないことを痛感した。
戦争はどんな理由でもあってはならない。
なぜ未だに世界中の全員がそう思わないのだろう。。

おそらく、アーノルド少佐も理由があってフルトヴェングラー
を糾弾するのだろう。でも、どうしても怒りが込み上げてくるのは、
フルトヴェングラーの誠心誠意で正直な発言を支持してしまうからだろう。

演じ方だけで、どちらに味方したいかを選ぶのは偏っているかもしれないけれど、
出演者の3人が敬愛しているフルトヴェングラーが気の毒でしょうがない。

アーノルド少佐のひょうきんさは少し救いにはなるのだけど、
それをぶちこわして余りある酷い断定の仕方は原本通りなのだろうか。

何が真実で何が虚偽なのかわからないというタイトルかもしれないけれど、
どうしても一方的な見方をしてしまった。
人間、白か黒かをはっきり決められるものではないし、
自分でも周りの環境によって揺れ動く事は多々ある。

いろんなことを考えた作品だった。
本多劇場も久しぶりだった。

ロビーにはフルトヴェングラーの他、当時の関係者たちの写真や肖像が
掛けられており、当時の説明文もあった。
時間をかけた資料を元に作られたものだとわかる。

こうやっていろんな演劇がまた観れたらいいなぁ。

キャスト
ティーヴ・アーノルド少佐     加藤健
ヘルムート・ローデ         今井朋彦文学座
エンミ・シュトラウベ        加藤忍
タマーラ・ザックス         小暮智美(青年座
デイヴィッド・ウィルズ中尉     西山聖了
ヴィルヘルム・フルトヴェングラー  小林勝也文学座

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