「戦禍に生きた演劇人たち 演出家・八田元夫と「桜隊」の悲劇」福岡市赤煉瓦文化館

2020年10月21日(水)

19時~ 演劇書を読む会

堀川惠子著

博物館の倉庫に眠っていた遺品の発掘により、戦前戦中戦後の演劇史を
書き換えるドキュメンタリー。
第23回AICT演劇評論賞受賞作。
広島で被爆した劇団員たち。
難を逃れた演出家は、投下四日後に現地へ赴き、仲間たちの安否に奔走する。
その目に映った惨状を膨大なメモに残していた。
名優・丸山定夫、女優・園井惠子、劇作家・三好十郎、演出家・八田元夫
築地小劇場からはじまった新劇と昭和の演劇史。
(薙野氏のレジュメより)

先月、映像の会で「さくら隊散る」の上演があったが、行けなかったので、
DVDを送っていただいた。その映像は本の読了のち観たのだけど、
本だけでもかなりの衝撃を受けたのに、映像は圧倒的だった。
私は長崎出身なので、戦後生まれではあるが、ずいぶん教育は受けてきた。
何度見ても戦争や核爆弾は悲惨すぎる。
今でも世界のどこかしこでいさかいがあっているのは悲しい。

本は第2次世界大戦前後の演劇界の状況や、戦時中の活動、戦後の復興など、
いろんな資料から調べたと思われる内容で、貴重な資料だ。
特に、表舞台にでない、演出家八田元夫の記録、メモ類を掘り起こした本書は、
長く演劇界に残すべき著書だと思う。
私は戦前、戦後はともかく戦中にこのような慰問演劇が活発に行われているとは
思っていなかったので、当時の演劇人の志の高さに頭が下がる。
警察による拷問や戦地での悲惨な状況、貧困による飢餓対策、
そこまでして演劇をする?と。

広島原爆によるその死までの壮絶な戦いからも目をそらさず、
それぞれの個人の崇高な生き方や華やかな舞台まで
十分に彼らの思いを読み取りたいと思った。
すごい本だった。

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