「トロイ戦争は起こらない」福岡市赤煉瓦文化館

19時〜 演劇書を読む会

ジャン・ジロドゥ 著 
岩切正一郎 訳
  

戦争を最後に防ぎとめるものは人間の意志と良心であり、それ以外のものではない。
―フランス外交官として第二次世界大戦に向かう生々しい現実に足を下ろしながら、
戦争を、人間の魂の医師ともいえる芸術家の目でしっかりととらえ、見事に描き切った。
(薙野さんレジュメより)

この脚本で演じられた鈴木亮平主演の舞台の映像をいただいていたので、
家で本を読んだ後に映像を観た。演出は栗山民也氏。
完璧に脚本に沿った演出だったけど、出演者の豪華さと多セリフに感心しながら観たので、
あまり内容的なところまで読み取れなかった。
第二次世界対戦前に向かう話しというが、日本の歴史として昭和ころの話しとは思えない古い感じだったな。
妙に預言者が出てくるあたりがなんとも嘘くさい。
しかし、内容的には戦争はやめよう、と訴えるエクトールが清々しくて、戦争推進の老人たちを揶揄しているのがわかり気持ちがいい。
エレーヌの象徴的美しさは感覚を麻痺させる麻薬のような役目をしている。
アンドロマックの揺れ動く心が身ごもった母親の立場としてよくわかる。


本の感想というより映像の感想になってしまった、
たまたまNHKの大河ドラマ西郷どん」の主役をやっている鈴木亮平はその役においても、
民を思う誠実な男を演じている。ちょっとはまりすぎて役が固定化してないか?
一路真紀は50代にしてこの美しさだ。まだまだ舞台で映える女優さんだ。

この作品は劇団四季で浅利さんの演出でも上演されている。
薙野さんが探してくださるそうなので、それも楽しみにしている。
先日、映像で観た「解ってたまるか!」のようなすばらしい舞台をまた観れるのかな。


ジャン・ジロドゥ 略歴〕
1882.10.29 - 1944.1.31 フランスの劇詩人。元・ハーバード大学講師、元・ベルリン大使館書記官。
フランス オート・ヴィエンヌ県ベラック生まれ。
高等師範学校ではドイツ文学を専攻し、ハーバード大学講師を務め、帰国して創作活動に励み、1911年「無頓着者学校」などを発表している。
1910年には外務書記生試験に合格し、外交官になる。
その後、「情熱家シモン」(1916年)、外務省内の恩人ベルトロが失脚した事件をモデルとした「ベラ」(1926年)などの小説を発表した。
その後、「ジークフリートリモージュ夫人」(1922年)を戯曲として改稿して劇作家の道を歩みだした。
その饒舌な機知と幻想的作品で20世紀前半の世界の演劇の王者とされている。