「リア王」 キャナルシティ劇場

2024年4月25日(木)

13時~  10500円  パルコプロデュース

作:ウィリアム・シェイクスピア
翻訳:松岡和子
演出:ショーン・ホームズ

高齢のリア王は3人の娘たちに国を分割して分け与えるようとする。
長女ゴネリルと次女リーガンは、言葉巧みに美辞麗句を並べたが
末娘のコーディリアは姉たちのようにお世辞を言わなかった。
リア王はコーディリアに腹を立てて姉2人に領土を譲る。
その後、ゴネリルとリーガンは父を疎んじ、荒野へと追い出す。
リア王コーデリアの真心に気がついたが、戦いの末、
二人の姉とともに殺されてしまう。。。。

救いようのない悲劇である。子どものときに読んだ絵本では
たしか、リア王コーデリアはハッピーエンドだったような気がするが・・
とにかく老害の極みであるリア王になんの同情もできなかった。
絵本ではなかった(と思う)グロスター伯爵家の悲劇は他の演劇公演で
初めて知った。こちらの悲劇もどろどろとした愛憎にまみれていて、
庶子エドマンドが家督を奪い取ろうとする様には旋律が走った。
目をえぐり取ったのはコーンウォール侯爵だったか。。。狂気に驚く。

全く前知識なしで観たので、2階席から最初の情景にかなり驚いた。
時代設定は原文そのままかもしれないけれど、衣装が現代。
三人の姉妹はピンクのワンピースだ、リア王はダブルのスーツ。
床も壁も真っ白で、なぜか複合コピー機と懐かしいOHPプロジェクター、
下手にはウォーターサーバー
目が点。。。 しかし台詞は古典を踏襲しているような丁寧な作りで、
たんたんと芝居は進んでいく。
そのうちだんだん、舞台装置も気にならなくなってきてキャラクターたちを
追っていった。

一押しはエドマンド役の玉置さん、最近よくTVでもお見掛けするけれど、
やっぱり舞台がいいなぁ~~ 憎々しさがすごい!悪人なら彼だねw
リア王の段田さんも素晴らしかった。狂気と老人の悲哀が絡まって、
現代の高齢化問題とリンクする部分が見えて、身につまされるようだった。
エドガー役の小池鉄平さん、今回はいい人だった、目の見えない父と
歩く姿が涙を誘った。三姉妹の江口さん、小畑さん、萌歌さんも
ぴったりのキャスティングだった。萌歌さんの歌、良かった!!
ケント役の高橋さん、グロスター役の浅野さんは安心して観ていられる。
ベテランは舞台を締めるね。

キャナルシティ劇場での公演は観たいものも多いけど買いにくくなった。
ライブとかコンサートも混ざっているせいかな~
年に数本のために会員になるのはどうかなと思ってしまう。
ちょっと考えてみよう。


キャスト
段田安則 小池徹平 上白石萌歌 江口のりこ 田畑智子 玉置玲央 
入野自由 前原滉 盛隆二 平田敦子 秋元龍太朗 中上サツキ 
王下貴司 岩崎MARK雄大 渡邊絵理 高橋克実 浅野和之

 

「漫豪ストレートMAX」 ぽんプラザホール

2024年4月21日(日)

13時~  3000円(ペア割一人分)  劇団ZIGZAGBITE

原案:到生
脚本:テシマケント
演出:到生

“誌面街”(シメンガイ)の初代市長“テヅカ”が暗殺された。
彼の死後、犯罪組織“マンガーソン”による犯罪が横行した市中。
マンガーソンに追われていたツグミを助けたのは
やおい連合”の跳ねっ帰り“トヨタロウ”たち自警団である。
“アカツカ”の裏切りにも負けず、“フジオ”がマンガーソンを一掃する。
漫豪達の戦いが始まった・・・・

久しぶりのZIGZAGBITEだ。イケメンや強い美女たちを楽しみにしてきた♪
ストーリーはこてこての戦闘物だけど、名前が漫画家や漫画の登場人物名だ。
主役のキュー太郎、悪の親玉アトムとか。テヅカやトリヤマ、ゴウナガイ。
よく考えたな~~~そしてその中にほろりとくる人情話も盛り込む。
キュー太郎役の八坂桜子さん、トヨタロウ役の高橋力也くんが魅力的だ。
トヨタロウ・・・ゴクウか?  客席からも元気玉を集める。
見事な構成で飽きることなく最後まで観れた。ちょっと長かったけど(^^;

到生くんとテシマくんで作った今回の作品はとても面白かった。
観ていてスカッとする。勧善懲悪はベタだけど気持ちいい。
まあ登場人物が多いし、一人で何役もこなすので時々混乱したが。
小沢さんはいつもこんな役回りだけど、いてもらわないと困る。
若い人と一緒に頑張ってると思う、すごい!
ガラパの西山さんはこういう舞台でも魅力を発揮するな~
高瀬さんのアカツカは髑髏城の「あの人」だな、顔も含めて面白かった!
太一くん、万実さん出ていなかった、残念。次回は観たいな。

<感想>
キャスト
八坂桜子、麻倉えいみ、テシマケント、白瀧姫翠、小田あいか、
高瀬龍之介、到生、高橋力也、吉永悠人、内田琉聖、生野智大、花岡昊芽
花岡悠介、西山明宏、小沢健次、砂田夢菜

 

「俳優と劇場の倫理」福岡市赤煉瓦文化館

2024年4月18日(木)

19時~ 演劇書を読む会

スタニスラフスキー

佐藤順一氏 プロフィール>
1955年大分県生まれ。舞台をこよなく愛する役者であり、
その鋭い着眼点と感性による演出は高く評価されている。
深みのある声と演技で、ドラマや番組、CM、ナレーション等、
マスコミ広範囲に渡って活躍している。
RKB児童劇団、劇団夢工房などを経て、1988年に演戯集団ばぁくぅを
立ち上げて主宰。1996年には有限会社化して稽古場・アトリエ・事務所を構え、
アトリエ戯座などを使った公演を行うとともに、後進の育成にも力を注いできた。
(薙野さんのレジュメより)

今回は、佐藤順一氏から、これまでの演劇活動についてお話をお聞きした。
巻頭の書は氏のお勧めだ。スタニスラフスキーは私には難しい(^^;
ちなみに検索してみたが、販売されていないようだ。絶版なのかな?

佐藤さんにお会いするのはちょうど1年ぶりだ。
最後にアトリエ戯座で読演を聞いた。
読演を終了するという月に行けなくて残念だった。
久しぶりの佐藤さんは長髪にされていて、髭も蓄えられていた。
直前の何かの公演のために伸ばされたようだ。相変わらずおしゃれだ~

私は2003年の「私生活」からばぁくうを観始めたので、
その前の貴重なお話しをたくさん聞くことができてうれしかった。
演劇を始められたときの話や劇団に所属されていたときの話。
ばぁくうを設立したときの話等々。。
私もばぁくうのお芝居を観ると同時にそこで多くの知り合いと出会った。
今も交流があるのは少数だけど、私の大事な思い出と人たちだ。
あれからいろんな舞台を観てきたけど、ばぁくうのような劇団に
出会ったことはないなぁ、それだけインパクトの強い舞台だった。

佐藤さんは現在の福岡の演劇界や演劇人にはいろいろな意見を
もっているようだったけれど、時代は移り変わるものかもしれないね。
何がいいのかよくないのかは、試行錯誤していかないと。
かしこい観劇者にはなれない私だけど、応援していきたいとまだ思ってる。

佐藤さん、ありがとうございます。

演劇書を読む会は、偶数月の第3木曜日に開催しています。

 

「twilight」 ぽんプラザホール

2024年4月14日(日)

13時~  1800円  劇団HallBrothers

作・演出  幸田真洋

タクシー運転手の渡瀬は、繁華街で偶然、中学時代の同級生を乗せる。
若気の至りで深く傷つけてしまった、いわくつきの女性。
十数年振りに再会した彼女は美しい大人の女性に成長していた。
外見的には……
彼女が告げた行き先は、周囲を深い森と鉄条網に囲まれた、小さな教会。
そこで渡瀬が見たものは―
(公式サイトより)

2007年初演の「ヘルメット・オン・ザ・ビーチ』がモチーフということ。
内容はおぼろげにしか覚えてなかったけど、あのころの幸田さんの作品は
かなり鋭く社会を風刺したものが多かったような気がする。
今回の作品はあれから17年の間に起こったいろんな事案を踏まえていても、
ラストを柔らかく着地しているようで、いい感触を持った。

新興宗教らしきコミュニティでのふるまいや説教が実にリアルで上手い。
思わず入信してしまいそうな説得力で驚く。
ホールの作品には時々こういう人が出てくる。
こういうところの教義って間違っていないんだよね~~
でも、やっぱり滉太のようにことなかれ主義に陥ってしまう。
矛盾しているけれど、つらいところだね。
滉太は結婚できたようだけど、実際にはいろんな理不尽な理由で
不幸になる人もいるのだと思う、自分がそういう立場だったら?
と自問自答してみたよ。答えは出しにくいけど考えることは大事だと思う。

今回もあやさんの演技が良かったな~今までの優しさに加えて
母親のエゴイスティックなまでの愛情もよく出ていた。
若い役者さんが増えたけど、重厚な役柄も作品には必要だ。

25周年を迎えてますます素敵な舞台を作られることを期待します。

<感想>
キャスト
飯山文乃  明田有砂
渡瀬    奥積竜太
真裕美   萩原あや
沢渡    唐島経祐
庄司    大畑慧光
ソフィー  山中海瑠
戸田    本多史佳
エマ    松下ゆき
月島    佐久間光
マザー   鳥居アオイ
菊池    宮﨑実優
滉太    宮城遼久

 

「新生!熱血ブラバン少女。」 博多座

2024年4月7日(日)

11時~  9500円  博多座25周年記念作品

作   G2
演出  加納幸和花組芝居

西北女子学園吹奏楽部は、全国大会の常連校だったが
指導者不在の上、部員の半数が退部してしまいほぼ休部状態。
そこに、なぜかスポーツ専門のメンタルコーチ城門輝勝(博多華丸)
が指導を行うことに。。。。
果たして「新生」吹奏楽部は、城門の熱血指導により本当に
全国大会へ出場できるのか?
博多座公式サイトより)

華丸さんがまた博多座へ来たよ。めんたいぴりり以来かな?
決して役者さんとして上手かというとそうは思えないのだけど、
ふるさと博多を思う気持ちがいっぱい伝わってくる。
NHKあさイチで全国区になってしまったけど、折にふれ地元愛を披露する。
先日は福岡で華大どんたくなるものをやって盛り上がったみたい。
地方出身の有名人が地元を取り上げてくれるのは本当にありがたいね。
最近は福岡在住の芸能人も増えたようで、コロナ禍でのリモート勤務など
中央にいなくても動きやすくなっているから、
東京一極集中も緩和されてきているのかな

地元の有名校、精華女子の吹奏楽部とのコラボはとても見ごたえがあった。
構成や演出など、難しい部分も多かったと思うけど、
役者さんも実際に演奏をしているように見えた。素晴らしい!
ストーリーは少し無理はあったものの、上手く最後はまとまっていて
それなりに楽しかった。
親子の愛情、友だちとの友情、そして同じ目標に向かって力を合わせていく。
これらが充分に表現されていて、ほのぼのとし元気が出る舞台だった。

元妻役の紅さんはかっこよかった~
宝塚出身の人は実力も華もあって輝いている人が大勢いるね。
梨央ちゃんを始め若い出演者は元気があってよかった。
そして、宇梶さん、浅野さんは舞台を締めるね。
地元の役者さんも数名出演していたけれど、もうちょっと
たくさん出してほしかったな

華丸さんがますます活躍されることを福岡県民として切に願っています。
めんたいぴりりも待っとるよ~~~~

キャスト
城戸輝勝    博多華丸
河合凛々子   紅ゆずる
河合葵     鈴木梨央
鈴江響     星野真里
橋口大吾    斉藤優(パラシュート部隊)
手塚岳斗    小林大介花組芝居
手塚杏     森保まどか
荒木唯     上西怜NMB48
岩永澪     神田朝香
橋口紬     古川あかり
岩永隆二    宇梶剛士
海羽眞弓    浅野ゆう子
精華女子高等学校吹奏楽
伊藤卯咲
柴﨑凛々子
田中杏佳
牧野ひかり
弥和
仲道和樹
下畑博史(パタパタママ
木下貴信パタパタママ
高須賀浩司
武市佳久(花組芝居
青井想
原岡梨絵子
下村結香
大野朱美

 

「オッペンハイマー」 映画

2024年3月29日(金)イオンシネマ大野城 

13時10分~  1100円

脚本・監督 クリストファー・ノーラン

第2次世界大戦中、才能にあふれた物理学者のロバート・オッペンハイマーは、
核開発を急ぐ米政府のマンハッタン計画において、
原爆開発プロジェクトの委員長に任命される。
しかし、実験で原爆の威力を目の当たりにし、さらにはそれが実戦で投下され、
恐るべき大量破壊兵器を生み出したことに衝撃を受けたオッペンハイマーは、
戦後、さらなる威力をもった水素爆弾の開発に反対するようになるが……。
(映画紹介サイトより)

公開初日だったけど、平日なのでそこまで観客は入ってなかった。
ゴジラの方が多かったような感じだった。
事実に基づいた作品だけど、その構成を原爆投下の前後で交互に
時系列通りでなく、いったりきたりする演出だった。
説明はなく、モノクロかカラーかで見分ける?役者のメイクも変えて。
一生懸命見ても完全にわかったわけではなかったけれど、
だんだん理解できるようになった。
オッペンハイマーの心の動きや、周りの彼に対する賞賛や嘲りが直接
胸に響いてきて、本当に大きなテーマを取り扱った作品なんだと思った。

淡々とした表情のオッペンハイマーは物理学者としての喜びも家族との幸せも
派手に喜ぶわけではない。そして、スパイ容疑を掛けられたり国家に責められても、
激しく悲嘆にくれるわけでもない。そして国外に逃げることを勧められても
「母国を愛している」と動くことをしない。
そして原爆を投下された日本を思い、水爆を作ることを拒否する。
自分に正直でいようとした彼は結論のでない人生に結論を出した。

圧倒的な映画だった。こういう作品が作れることが人間の証なんだと思った。
それにしても、昔の映画は「たばこ」が大きな小道具だ。
現代の映画ではそれができないのが残念なのか時代なのか。。。なんとも。

キャスト
J・ロバート・オッペンハイマー  キリアン・マーフィ
キャサリンオッペンハイマー  エミリー・ブラント
レズリー・グローヴス      マット・デイモン
ルイス・ストローズ       ロバート・ダウニー・Jr.
ジーン・タトロック       フローレンス・ピュー
アーネスト・ローレンス     ジョシュ・ハートネット
ボリス・パッシュ        ケイシー・アフレック
デヴィッド・L・ヒル       ラミ・マレック
ニールス・ボーア        ケネス・ブラナー
フランク・オッペンハイマー   ディラン・アーノルド
イジドール・ラビ        デビッド・クラムホルツ
ヴァネヴァー・ブッシュ     マシュー・モディーン
ハーコン・シュヴァリエ     ジェファーソン・ホール
エドワード・テラー       ベニー・サフディ
ウィリアム・ボーデン      デビッド・ダストマルチャン
アルベルト・アインシュタイン  トム・コンティ

 

「骨と軽蔑」博多座

2024年3月28日(日)

12時半~ 12500円  KERA CROSS

作・演出  ケラリーノ・サンドロビッチ

手練れの女優7人と一緒に辛辣なコメディを作ってみたい。
会話劇だ。会話、会話、会話。今は一応コメディと呼んでおくけれど、
作品を占める笑いは苦味の強いものばかりになるかもしれない。

公表されたビジュアルの通り、「居並ぶ墓石(の絵)を前にして
楽しそうに笑う女たち」がイメージだ。そんな不謹慎を
笑ってしまえるような舞台になるといいなあ。
今回は派手な仕掛けは使わないつもり。彼女たちの芝居が仕掛けだ。
(公式サイトより)

ケラさんの言うとおり、素敵な女優7人の会話劇だった。
シンプルなチェーホフ風な屋敷を舞台にその屋敷内外を表現していたけれど、
時々ごっちゃになるのがまた可笑しい。
ナイロン100℃の舞台は難しくよくわからん!というものが多いけれど、
今回の舞台(ケラクロス?)はとてもわかりやすいキャラクターが多くて、
各人に思い入れすることができた。
ストーリーテラーのネネの誘導ですんなり物語に入り込むと、
個性的でぎくしゃくしているマーゴ、ドミー姉妹と母親グルカの
関係性を模索していく。
世の中によくあるある家族のようで、姉妹でも敵対している感じや
親子でも信じてない感じがうっときて苦しい。
グルカと秘書のソフィーは夫が亡くなる前と後ではがらっと関係が変わって、
なんだ?という感じ。一番わからなかったのがソフィーかな。
ミロンガは沈着冷静なイメージだけど虫wもやる。
この虫の意味するところ、最後までわからなかったww
ナッツ!もう可愛くて抱きしめたい。もともと小池栄子は好きな女優さん。
衣装もセリフもいいし、マーゴ大好きな様子が愛しくて健気。
宮沢りえのマーゴは圧巻だったな。野田さんの舞台のりえちゃんも素敵だけど。

北九州でなく博多座に来てくれて本当に嬉しかった。

キャスト
マーゴ   宮沢りえ
ドミー   鈴木杏
ネネ    犬山イヌコ
ミロンガ  堀内敬子
ソフィー  水川あさみ
グルカ   峯村リエ
ナッツ   小池栄子