「TERROR」 福岡国際会議場メインホール

18時〜 特別料金 企画 兵庫県立文化センター 


作 フェルディナント・フォン・シーラッハ
演出 森新太郎

グレーをベースにしたとても地味なちらし。テロと読めずにテラーと読んでしまっていた。
橋爪さんはわかったけれど、他の役者さんは知らなくて、料金も高額だったのでスルーの予定だった。
しかし、知り合いから特別料金で観れる紹介があって、それならと観にいった。いいお席だった。

ドイツの有名な作家であるシーラッハは刑事事件弁護士であり、体験した事件を織り込むという技を持っている。

「テロリストにハイジャックされた旅客機を撃墜し、164人の命を奪い7万人を救った空軍少佐。彼は英雄か、罪人か?
決するのは裁判を見守る“観客”、つまりあなた自身です!」ちらしより

ストーリーはこのとおり、素舞台に椅子を数客だけ置いたシンプルな法廷だ。
中央に裁判長。左に被告のコッホ少佐と弁護人、右に検察官と証人。
弁護人(橋爪功)と検察官(神野三鈴)息をも飲むやりとりがすごかった。
互いに弁論しているときの相手の表情も実に興味深かった。
飄々とした橋爪さんときりっとシャープな神野さんの対比が面白かった。
被告は淡々としているものの、自分の判断は間違っていなかったという自信に満ち溢れていた。
それは旅客機に乗っていた乗客の妻が証言にたっても変わらなかった。

日本ではテロ意識が一般的に薄くて、自衛隊においてもここまで危機管理能力の高い人はいないのではないだろうか。
軍人という戦時中の「国のため、天皇のため」という意識をお持ちのかなりの高齢な方は身につまされるのだろうか。
私自身もここまで崇高な意識をもった若者は見たことがない。

というわけで、評決を迫られた観客であっても日本ではそこまで危機意識はない。
だから、というわけでもないか橋爪さんが行った2016年の朗読公演ではすべて有罪だったらしいが、
今年の21公演は有罪11無罪10という結果になった。
つまりどっちがどっち。みんなが迷ってるという結果だ。

それでも、自分が決した結果と違っていたらなぜ?同じだったらそうかな。とみなの結論に考えをめぐらす。
そもそもが考えさせるのが目的のこの公演だ。もんもんとしながら友と語り合ったその結末が自分のかてとなる。

観てよかった、いい時間を過ごせた。

キャスト
橋爪功
今井朋彦
松下洸平
前田亜季
堀部圭亮
原田大輔
神野三鈴