「松竹と東宝 興行をビジネスにした男たち」福岡市赤煉瓦文化館

teru10162018-12-19


19時〜 演劇書を読む会

中川右介著 光文社新書

本書は松竹兄弟と東宝、宝塚を含む阪急グループの創業者の小林一三の物語である。
「松竹」は創業者である白井松次郎大谷竹次郎という双子の名前を合わせたものだ。
東宝」は東京宝塚にちなんだものであり、宝塚歌劇団に端を発する。
劇場の売店の子と裕福な商家に生まれた慶應義塾卒という対照的な両者は看板役者、
大劇場をめぐって数十年のあいだ、しのぎを削る。
それが現在の松竹による歌舞伎の独占、阪急グループの東宝、宝塚の繁栄につながっていく――。
膨大な資料を読み解いて描き出した、新たな演劇史。(薙野さんレジュメより)

2018年8月初版発行の新書なのだけど、実によく調べられていた。
著者は演劇関係の人ではなく、紹介文には作家、編集者、と書いてあった。
幅広く音楽、文学、演劇、写真などの評伝、編集、出版などされているようだ。

私の浅い知識では、松竹は映画と新喜劇、東宝は映画とミュージカルぐらいなのだが、
こんなに深い発祥と関係性、展開事業があるなんて読むほどに驚いていった。
今は無きたくさんの劇場の中に浅草十二階があったのにはびっくり。
風三等星のあの芝居は面白かったな〜

明治時代からこんなに娯楽があったということにも驚いたけれど、
何もないところからそれを目指して興行していくという大規模な構想を持っている人がいた。
これが偉人なんだと思う。きちんと資料にして伝えていくに当って本書はかなり重要だと思う。

内容は戦争などもはさんで、山あり谷ありで決して順風満帆ではなかった歴史の記述だったが、
あきらめることなく進んでいったということにおいては、両者とも同じであった。

重要人物がやまほど登場したのだけど、追いつかなくて流し読みだった。
その中で長谷川一夫だけは唯一、耳にしたことがあるイケメン俳優。
作品は観たことはないけれど、歌舞伎役者出身で林長次郎という名前だったらしい。

まだ、宝塚大劇場も新しい歌舞伎座も行ったことがない。
いつか行こうと思うだけでは始まらない。
2019年のラインナップを確認しておこう。