「花いちもんめ」 福岡市立中央市民センター

2022年3月17日(木)

19時~ 演劇の映像を観る会

地人会「花いちもんめ」(作:宮本研、1985、1時間05分)
 旧満州に渡った開拓団の逃避行での悲劇をモチーフに、
 残留孤児問題に切り込んで、平和や生きる意味を問う一人芝居。
 演出:木村光一(下の写真)、出演:浅利香津代
 
<浅利香津代>
1944年、秋田市生まれ。日本大学芸術学部演劇学科卒業後、望月優子に師事。
新人会に8年間在籍して1967に初舞台。そののち前進座中村翫右衛門に師事し、
前進座に10年在団後フリーで活動。多くの舞台に出演するほか、
テレビ・映画などの映像作品でも活躍している。

<地人会>
文学座を退団した演出家木村光一が1981年に創立した演劇企画制作団体。
日常生活のなかで人間をみつめ、時代や社会への認識を深める舞台を目指し、
A・ウェスカー、井上ひさし水上勉、宮本研、山田太一らの作品を上演。
多彩な俳優が出演し、地方公演も人気を集めた。
1985年から2007年まで年に一度、原爆の悲惨さを訴える朗読劇
「この子たちの夏~1945・ヒロシマ ナガサキ~」公演を行った。
2004年には菊池寛賞を受賞した。

一人芝居は圧倒的な演技力が必要だ。長時間のセリフと演技で観る者を魅了する。
最初は暗い感じのお遍路姿で暗い舞台に立つ女優さんを見て、最後まで
見れるかなと思ったけれど、語り始めると徐々に引き込まれていった。

女は遍路荷物を降ろし、湧き水で口を潤し、被り物をはずして、
説明口調でなぜお遍路をしているのか語りだした。
ちょうど中国残留孤児たちが日本に戻ってきだした時期と重なっているようで、
その当事者としての懺悔である。
夢のような理想を掲げて満州へ渡った多くの日本人。
その夢は打ち砕かれて、さらに追い打ちをかけるように悲惨な状況に追い込まれる。
片隅の村からハルピンへの逃避行は想像できないほどひどい道行きだった。
死に絶えたもの、辱めを受けたもの、必死で逃げ延びたもの。
ハルピンでもさらに状況は悪く、そこで子供を手放してしまった女。
その理由は本当に苦しいものだった。
それから一人で日本に戻った女は、かつて手放した娘が日本にやってきたの知った。
会えなかった。その娘が中国に戻るときにこの歌をお母さんが聞けばとわかるはず、
と、歌ったのが「はないちもんめ」だった。 心が血の涙を流す。
誰が悪いのだろう、何が悪かったのだろう。。。

戦争のつけは一番弱いものに回ってくる。

もうそんなことが起こってはいけないとみんな知っているはずなのに、
今だに世界では戦争が起こっている。どうしてなんだろうか。。。。。

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「ナイル殺人事件」 映画

2022年3月11日(金)イオンシネマ大野城 

9時40分~  1100円

原作 アガサ・クリスティ「ナイルに死す」
監督 ケネス・ブラナー

エジプトを訪れた“世界一の名探偵”ポアロは、
ナイル川を巡る豪華客船に乗っていた。そこには新婚のドイル夫妻と、
彼らを祝福する招待客が乗船していた。
しかしある日、新妻リネットが死体で発見される。
ポアロはこの密室殺人の真相を解き明かそうとするが……
(映画紹介サイトより)

ずいぶん前にみた「オリエント急行殺人事件」と同じシリーズかな?
ポアロが同じ人だった。え?監督だったのか。。。
この作品も読んでいたはずだったけど、覚えてなかった。
でもおかげで謎解きの楽しさも味わえた。
冒頭が戦争シーンだったので、ちょっと目をつぶってしまった。
今日現在、ロシアがウクライナに侵攻中である。悲惨な現実と重なる。。

と、それはポアロの若いときの話だったようで、顔の傷の理由だったのかな。
大切なパートナーとのつながりの説明でもあった。

そして、エジプトのロケシーンはすごかった。実は行ってみたい国のひとつ。
コロナのおかげで行けなくなってしまった国の様子を十分に楽しむことができた。
そして華麗な男女の結婚式と豪華客船での様子。
実は殺人が起こるのだけど、それまではその豪華さを存分に楽しんだ。
飾りや食事、衣装などオリエント特急も素晴らしかったけど、さらに豪奢だった。

私の灰色の脳細胞では最後まで犯人はわからなかったけれど(^^;
なかなかのトリックだった。しかし。。。現実的に殺人ってこんなに
簡単に行えるものなのか?と思う。

洋画も好きなのだけど、難点は顔の区別がつきにくいこと。
登場人物の名前と顔と関係をつかむまでが邦画より時間がかかる。
次回からはちょっとだけ前知識を入れていくことにしようか。

キャスト
エルキュール・ポアロ  ケネス・ブラナー
リネット        ガル・ガドット
ロザリー        レティーシャ・ライト
サイモン        アーミー・ハマー
ブークの母       アネット・ベニング
アンドリュー      アリ・ファザル
サロメ         ソフィー・オコネドー
ブーク         トム・ベイトマン
ジャクリーン      エマ・マッキー
バワーズ        ドーン・フレンチ
ルイーズ        ローズ・レスリー
マリー         ジェニファー・サンダース
ウィンドルシャム    ラッセル・ブランド

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読演131 「おじいさんのランプ」 アトリエ戯座

2022年3月10日(木)

15時~  クラウドファンディングリターン券  (有)演戯集団ばぁくう

作  新見 南吉
読演 佐藤順一

東一(トーイチ)くんは、倉から巳之助おじいさんのランプを持ち出します。
それは、おじいさんも忘れてたほど昔の、でもとっても思い出深いものでした。
おじいさんは、世の中にまだ電気が充分に行き渡っていない頃の、
そして、おじいさんにとってもとても思い出深い話を聞かせてくれたのです。
(ちらしより)

作品もさることながら、佐藤さんの語り口に引き込まれる。
読演ももう何年目だろうか?私はだいぶさぼりがちだけど、
コロナでちょっとずつ休演しながらも絶対に終わったりしないところが
本当にすごいなと思う。
変わらない戯座のゆったりした座席に腰を落とすと一気にばぁくうの世界へ。

電気の前にランプの時代があったことなど、昭和30年代の生まれの私は知らない。
でも、生まれて今まですごい技術革新があったことを思えば、
その前だってすごいスピードで世の中は変わってきていたのだろう。
人生はあっという間だけど、大きな変化のはざまに生きてしまうと、
面白いやら大変やら・・・笑

作者の新見南吉は29という若さで結核により早逝している。
29年は短いという気はするけれど、それだけ内容濃い人生だったのかと
想像する。

とても面白かった。読演以外にお芝居も計画されているらしい。
楽しみにしています。

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「ドライブ・マイ・カー」 映画

2022年2月26日(火)イオンシネマ福岡 

14時45分~  1100円

原作    村上春樹
監督・脚本 濱口竜介

脚本家の妻を突然亡くした舞台俳優の家福。
二年後、喪失感の拭いきれない彼は、演出を任された演劇祭に愛車で向かった先で、
専属ドライバーのみさきに出会った。
口数の少ない彼女が運転する愛車で過ごす時間の中で、
家福は妻の残した秘密に向き合っていく。
(映画紹介サイトより)

原作を読んではいないけれど、アカデミー賞候補と聞いて、ちょっと興味をもった。
西島さんも最近、気になっている役者さんだし、地味そうだけど見てみようかと。
まさか3時間もあるとは知らなかったけれど、そんなに長く感じなかった。
しかも、設定が演劇と知って、広島の場面あたりから期待が膨らむ。
チェーホフで思い出すのは『地点』、『アントンクルー』
そして「ワーニャ伯父さん」は『ばぁくう』なつかしい。。

舞台に登る前の部分はよく知らないのだけど、感情をこめない本読みってのが
すごく気になった。一般的にそういうものなの?
国際演劇祭でのオーディション、いろんな国の人がそれぞれの言語で話す。
驚いたのは手話で演じるイ・ユナ。実際にこういうことが可能なのだろうか?
ひとつの言語と理解すれば驚く話でもないか。
配役の告知。年齢は関係ない。演劇でもよくみられる現象だ。

悠介と音の夫婦関係はいろんなセリフや家の中を見ると想像がつく。
深く愛し合っているのは理解できたが、妻の浮気を黙認する様子は
理解できなかった。芸術家だからそう、というわけでもないだろう。
音の裸の腰はすごくくびれていて印象的だった。

最も理解できなかったのは高槻。若い男性というだけで隔たりを感じるし、
なぜ、ああいうラストになってしまったのかもわからない。
悠介が役者に戻ったきっかけになったのは間違いないのだけど・・・・

そしてドライバーのみさき。感情のない顔で演じる彼女は母親の影を
引きずっている。親との関係が非常に子供に影響するのは、よくわかる。
よく頑張って生きたね、と声をかけたくなる。心に突き刺さる演技だった。

ラストの「ワーニャ伯父さん」の舞台シーン、
ソーニャのセリフ(手話だけど)がこの作品の、悠介の、全てに重なっていた。
生きていきましょう、働きましょう。
私自身にも響くことばだった。

全く笑う部分はなかったけれど、ちょっとペーソスを感じたのは、
スマホは現代のものなのに、なぜかカセットテープ。
みさきのふるさとへドライブするシーン。遠すぎてありえない。
たばこを吸って、手をルーフの外へあげて煙を外へ出すシーン。
ユンスが自宅へ悠介を招いて、妻を紹介するシーン。
他にもいろいろあった気がする。

とても面白かった、映画だけど演劇だった。


キャスト
家福悠介  西島秀俊
渡利みさき 三浦透子
家福音   霧島れいか
イ・ユナ  パク・ユリム
コン・ユンス  ジン・デヨン
ジャニス・チャン  ソニア・ユアン
ペリー・ディゾン
アン・フィテ
柚原    安部聡子
高槻耕史  岡田将生

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「演劇都市ベルリン―舞台表現の新しい姿」福岡市赤煉瓦文化館

2022年2月17日(木)

19時~ 演劇書を読む会

新野守広 著

ドイツ演劇の魅力のすべてがここにある!
東と西の接点に生まれたベルリン演劇の創造の源を探り、
その活力溢れる現在の姿に迫る待望の書。

★今回は、2018年4月から2021年6月までベルリンに滞在された
ダンサー/振付家の手塚夏子さんから、ドイツで体験された
パフォーミングアーツなどのお話を聞きます。★

<手塚夏子さんプロフィール>
ダンサー/振付家
横浜生まれ。1996年より、マイムからダンスへと移行しつつ既成の
テクニックではないスタイルの試行錯誤をテーマに活動を続ける。
2001年より自身の体を観察する『私的解剖実験シリーズ』始動。
同年、私的な実験の小さな成果が「私的解剖実験-2」に結晶。
体の観察から関わりの観察を経て、社会、世界で起きる様々なことを
観察するべく実験的な試みを行う。
2013年、関東から福岡県へ活動拠点を移行。
2018年10月にKyoto Experimentにて「点にダイブする」を上演。
2018年4月から2021年6月までベルリンでダンス活動をしていたが、
2021年現在は福岡を中心に活動している。

というわけで、ドイツ演劇について手塚さんからその体験を通じて
お聞きする会となった。読書ではなかったせいか、9人もの参加者で、
久々ににぎやかな会となった。
手塚さんは年代は順不同で思いつくまま話していただいて、とても
おもしろい話が聞けた。
とくに彼女の実験的演劇のWSの話などは、聞くのは笑えるものだったけど、
実際に参加していた人のとまどいがわかるようで、たいへん面白かった。
化粧っけのないお顔は童女のようで、淡々と大変だったことも話される。
ドイツを愛しているんだなとよくわかる。
私も行ってみたくなったよ。
あ~あ・・外国へ行けるのはいつになるんだろう?

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「マメな男」 春日市ふれあい文化センターサンホール

2022年2月13日(日)

14時~  1800円  劇団 go to

作・演出 後藤香

父親嫌いな高校生と、父親になりたくて恋人に別れを告げた青年と、 
歌手を名乗る女性。 田舎町の山裾にある、小さな神社で、三人は出会う。
それぞれの罪を隠し、救われようと祝詞(のりと)をあげる三人。
「穢れをはらい、望みをかなえてもらおう」 祝詞の腕はどんどんあがっていき、
ついには神社の神事で代表して 読み上げるはめに。 
だが、彼らは隠したままだった。自分の罪を。
(こりっちより)

go toの公演は脚本がとても深くていろいろ考えさせられる。
ひとえに後藤さんの経験が多岐にわたっていてそれを掘り下げているからだろう。
前回の「愛の賛歌」もそうだったけど、いろんな年代の観客に向けて
いろいろ語りかけてくる。でも、ちゃんと笑わせてくれる。
初見の若い役者さん2人と後藤さんだったけれど、いい絡みだった。
 
今時の高校生でもあるし、自分の未来を悩んで考えている詞音(ことね)
千香の友人美月の元彼の倫人(のりと)は祝詞に詳しい。
詞音の父は千香の同級生。そして千香は介護が必要な父をかかえている。
なぜ、千香が地元の祭りを再開したがっているのか、倫人がなぜ祝詞
練習するのか、詞音がなぜちょくちょく神社に来るのか、
3人の事情が複雑に絡み合い、祝詞が響く。
家族や地域のことはわりにすっと頭に入ってくるのだけど、
3人の悩みはなかなか理解しがたいものがあった。
父の介護が必要な千香には少し感情移入したのだけど。
それでも、人はいろいろ悩んでいるんだな、ということがわかった。
そして、今回の祝詞は半端なく稽古したあとがみえる。3人ともすごい。
まるで音楽のようにハーモニーを奏でていた。

閑話休題
私にはふるさとがない、大学生のときに一家で福岡に引っ越してきてからは
ここがふるさとみたいなもの?地元にもなじまないし、知り合いもいないけど。
結婚後に住んでいる現住所はもう40年になるのになんだかまだ居心地がよくない。
そういう人も多いんじゃないかな。

カーテンコールでは後藤さんがやっと公演ができるようになって嬉しいと言われた。
私もとてもうれしい。役者さんやスタッフの人たちのご苦労がしのばれる。
感染者が出たといっては公演中止になったり延期になったり。
マスク着用、オンラインで稽古したり、消毒しまわったり、検査を繰り返したり。。
考えただけで気持ちが落ち込む。

これからもそういう状態は続くのかもしれないけれど、また笑って舞台を観れるよう、
見送りの役者さんたちと笑い合えるよう、そんな日がくるまで頑張りましょう。
あ、タイトルの「マメな男」・・・う~~ん??


キャスト
風間千香  後藤 香(劇団 go to)
水嶋倫人  服部 泰伸 
山﨑詞音  福田 菜々子(劇団 go to)

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「マイフェア・レディ」 博多座

2022年1月23日(日)

12時~  5000円  東宝

脚本・歌詞 アラン・ジェイ・ラーナー
翻訳・訳詞・演出 G2

下品で粗野な花売り娘のイライザ、その言葉使いをみて、
言語学者のヒギンズは研究のため、興味深く記録をとる。
ちゃんとした花屋の店員になるべくイライザはヒギンズに教えを請う。
イライザを貴婦人に仕立て上げるためにヒギンズは奮闘するが、はたして?

大好きな沙也加ちゃんを観たかった。
いろいろな理由があるのだろうけれど、残念でたまらない。
複数キャストだったけれど、福岡公演は下記のキャストで固定となった。

お話は知っていたけれど映画も舞台も観たことがない。
それでも、とてもおもしろく最初からひきこまれた。
イライザのギャップが愉快だし、ヒギンズの苦悩もおもしろい。
さらに、イライザの父親、ドゥーリトルやピッカリング大佐の役まわりが巧妙だ。
そして、ピアス夫人、ヒギンズの母の素敵なこと。さすが宝塚出身だ!

こういう話って日本でもあるかな、と考えたら、「舞妓でレディ」を思い出した。
方言を治したいという話は日本ではよくあるのかもしれない。
言葉使いに限らず、マナーとか礼儀とかいう話ではフィニッシングスクールなどで
教育が行われることもあるだろう。
堅苦しいマナーはごめんだけど、人を不快にさせないということはいいと思う。

舞台では朝夏まなとさんが痛々しいほど頑張っていた。見ごたえ抜群だった。
とにかく楽しい、すごい、カーテンコールでのあいさつも気合が入っていた。
そして、大千秋楽のカーテンコールも動画で見て、更に涙があふれた。
上演できてよかった。コロナや悲しみを乗り越えての上演に
東宝博多座、スタッフ、役者さん、全てに感謝します。

キャスト
イライザ:朝夏まなと
ヒギンズ教授:別所哲也
ピッカリング大佐:相島一之
ドゥーリトル:今井清隆
フレディ:寺西拓人
ピアス夫人:春風ひとみ
アインスフォードヒル夫人:伊東弘美
ヒギンズの母:前田美波里
カーパシー教授:辰巳智秋
ジェイミー:吉田要士
ハリー:鎌田誠樹
ジョージ:伊藤俊彦

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