「春、夜中の暗号」「よかっちゃん」ぽんプラザホール

teru10162010-09-07

19時〜 1500円 福岡・九州地域演劇祭
宮園瑠衣子作、「春、夜中の暗号」は2009年九州戯曲賞最終「よかっちゃん」は2005年かながわ戯曲賞最終になった作品。彼女とは以前、市民劇場の会員で親しくさせてもらっていたので、それはそれはその頑張り屋なところを間近で見てきた。 仕事しながら戯曲を書きながら講座に通いながら、そしていろんな舞台を観ながら。 彼女の演劇論はとても専門的で私に対等な話はできなかったのだけど、彼女の話しを聞くのは楽しかった。 そういう贔屓目はあったかもしれないが、どちらも原作を知っていたにも関わらずとても新しい作品として目の前に現れたのは、演出、役者の素晴らしさだろう。 もちろん、FPAPのスタッフワークの良さも作品を盛り上げていたに違いない。 私は見ていないけど、ANDANTE3でプレプレビュー公演、テアトル箱崎でプレビュー公演という段階を経ての本公演なのだが、それもまた一つの意味をもっていたようだ。 1作目「春、夜中の暗号」宮園さんが所属する78'Produceで2007年に初演。 彼女自身が演出。 居酒屋の2階で演るという奇抜さだったが、デビューとして反響もまずまずで次回公演を待っていたのだが、忙しいのかなかなか公演の話を聞かなかった。 そこへ演劇祭への参加作品としての話を聞き、びっくり。 どきどきして当日を待った。 女一人、男二人の芝居。 のっけから心中を思わせるくだりで暗いのだけど、小出しにそれぞれの事情があらわになっていくのがおもしろく、ひきこまれる。 不器用で上手く生きていけない二人。 女は中村公美さん、男はどん太郎さん。 とても上手だった。 また友人ネギシ(吉浦彰彦)の存在も重要。 能天気そうに見えるのに実は深刻な事情を抱えていそうな彼を吉浦さんが味濃く演じた。 演出は劇団Hall Brothers の幸田さん。 2作目「よかっちゃん」休業した酒屋の2階で姉弟のカオリ、タカシ(ぽち、旋風三十郎)がたぶん、死んじゃおうか〜というとき、姉の友達ユリコ(酒瀬川真世)がやってくる。 タカシににコナをかけるもタカシはユリコより姉が好きなふう。 エアコンもない部屋でセミの大合唱(観客全員w)の中、屋根の修理工事をした会社の平田(山口浩二)も手抜き工事がみつかり死にたい状況に。 集団自殺を迫る女(中村雪絵)は死神の一種だったか? コロスの二人は風鈴や風や雰囲気というか空気を表現していたよう。 随所に笑わせる部分があり、元の脚本からすると驚きの手法。 演出はあなざわーくすのわたなべなおこさん。 演出は対比的で「春・・」はオーソドックスで、「よかっちゃん」のほうはかなり新しい解釈があったようだ。 わたなべさんは観客参加型演劇を実践されている方で今回もセミの鳴き声を全員でやったり、たまに客に絡んだりする。 終演後にアフタートークがあり、マレビトの会の松田正隆さんと宮園さん、そして演出の二人とFPAP高崎氏。 九州戯曲賞で「春、夜中の暗号」を最も推していたのが松田氏であったので、こちらは絶賛。 「よかっちゃん」のほうの演出には驚いていたようだ。 私は宮園さんの反応も気になったのだが、彼女はやはり作品が自分から演出家へと移った時点で全面的に信頼していたようで、全てを受け入れるといった感じであった。 私は。。。というと「春・・」はいい作品だし今回の演出や役者も良かった。 「よかっちゃん」も良かったのだけど、やはりメインの三人の雰囲気とコロス、女、平田の雰囲気がえらく離れていてとまどってしまった。 でも三年前に初めて脚本を読んだときにこれを舞台にするって結構大変だろうなと思ったのにとても楽しい愉快な舞台になったことはうれしい。 思い切った演出が成功したのだと思う。 宮園さんの活躍をこれからも期待します。 あなざーわたなべさんの不思議な魅力もまたこれから別の作品で観てみたいものだ。 しかし、サカセさんはほんとに魅力的な女優さんだ! ドライアイス入りのカップ麺を掲げて観客席から入ってきたときは大笑いしたものの、ギリシャ神話のビーナスのようだと思った。 いやまじで。