「貧乏物語」 湾岸劇場博多扇貝

teru10162011-09-16

19時半〜 1500円 劇団マニアック先生シアター
原作:井上ひさし、演出:山口ミチロ。 以前ばぁくうで見せてもらったときは知らない内容を追うのは大変だったけど、今回は内容がわかっているので、とても興味深く観れた。 河上肇共産党の経済学者、実在の人物、「貧乏物語」は彼の代表的な著書である。 井上ひさしは彼が検閲を受けて留置状態にある留守宅での話を書いた。 だから河上肇の出番はなし。 その留守宅を守る妻と娘、および使用人と、ころがりこんできた女三人。 河上肇を中軸に女たちのさまざまな想いや行動を演じる。 扇貝の狭い空間ではあったけど、とても濃密な時間を過ごせた。 役者それぞれに良かったけど、特に美代(峰尾かおり)はビジュアルといい、物腰といい、当時の女中を彷彿させたし、またとても笑えるキャラクターだった。 かなりディフォルメしているようだったけど、その大仰さがうけた。 占いを語る部分はとても面白かった。 女優のクニ(永幡桂子)も当時の芝居環境の難しさをよく表していた。 早苗(今村映子)は夫と河上家の人たちとの間に挟まれつつも自分の意識を高めていく感じがよく出ていた。 そして河上ヒデ(山口るみ)ヨシ(野田麻衣)親子の凛とした態度がとてもかっこよかった。 さらに当時の思想家への弾圧が耳を覆うほどのリアルさで迫った。 お手伝いの初江(押淵絢子)も細かい気配りが隅々まで表現されていた。 しかしこれだけの女性たちに慕われる河上肇ってどんな男性なのだろう? 前回東京でみた、「11のささやかな嘘」でもそこにいない人物が大きくクローズアップされていたけど、演劇の技法としてきっと効果的なんだろうなと思った。 セットは、つっかい棒のあるふすまや、鴨居の上の河上肇の写真などなど、当時の家が上手く表現されていた。 引き戸の玄関を開け閉めする音もリアル。 いい作品だった。 人気作品のようで多くの劇団が上演しているようだ。 歴史は演劇にするととてもわかりやすくなる。