「都市の舞台俳優たち -アーバニズムの下位文化理論の検証に向かって-」福岡市赤煉瓦文化館

teru10162015-10-21


19時〜 演劇書を読む会

田村公人 著

社会学者の田村公人が15年の歳月をかけて劇団に密着取材、および観劇。
フィッシャーの「アーバニズムの下位文化理論」を検証するためだったいうが、
単なる学者としての好奇心だけでこんなにも長い時間をかける情熱があったのは思えない。
むろん、熱心な演劇ファンであったと思うだけど、私たちと違ってそれを分析、統計化したいという学者的な強い思いがこの本になったのかな。

付論のこの理論の再検討の部分は読んでもさっぱりわからなかったものの、
前半の実際の劇団や演劇との付き合い方やその内容は、仮名ではあったが、かなりリアルで、目の前にいるような錯覚すらあった。
観劇が純粋に好きで観てきた私も少しづつその劇団経営や役者さんの苦労を知る機会はあったのだけど、
統計的にみるとより深刻さが伝わってくるような気がする。
年令だとか家族だとか、結婚だとか、舞台以外のメディアだとか。。。
演劇人以外でもある程度芸術に関わっている人は同じ状況ではないかな。

私たちは福岡の状況と比較しながら本を読んだり話をしたりした。
東京とは規模の違いはあるけれど、福岡も九州各地からの演劇人が比較的集まる小都市だと思うので、本の内容と類似する部分はあるだろう。
最近では福岡から東京に移動する人や劇団も多いけれど地元で頑張り続ける人も多くて、
いろいろ考えて悩んでそれぞれの道を見つけていくのだなと感傷的になる。
人によって演劇を続けることの大変さの違いはあるとしても、この本を読んだら、ひとつの公演を作ることがどれだけ大変かを実感する。

より多くの人に演劇を見てもらえたら演劇人の質も生活も向上するのだろうし、収入も増えるだろう。
演劇で食べていくという選択をする人も多くなるかもしれない。

この本では小劇場の観客は演劇人か演劇を学んでいる学生かがほとんどだと調査しているけれど、
こりっちサイトを見ても純粋な観劇人が増えてきているのではないのかな〜

SNSの普及によってFBやツイッターなどで宣伝をしたり感想を読んだりすることができるようになったので、
数10年前よりは情報的なことは充実してきたはずだ。
演劇人はそれらを上手く利用して集客につとめ、私ら観劇人は「渾身のオススメ」をしなければならないよね。
もちろん、より良い芝居を作りたい、観たいというのは共通の目標で。